Contents
1. この本を読むべき理由
「営業が属人化してしまい、チームで再現できない」
「ベテランが辞めると業績が落ちる」
「ツール導入したけど成果が出ない」
──こんな悩みを持つ営業リーダーや経営者は多いはずです。
僕自身、中小企業診断士として多くの企業と接してきましたが、成果が伸び悩む営業組織に共通する課題は“再現性のなさ”です。営業は「できる人だけが成果を出す」状態に陥りやすく、組織で成果を出す設計がされていないことが多い。
そんな中で出会ったのが、本書『セールスマネジメントモデル』。
この本は「営業を属人化から解き放ち、誰でも成果を出せるチームに変える」ための実践的な方法論が詰まった一冊です。
もしあなたが、
- 営業チームを率いるリーダー
- 営業改革を命じられたマネージャー
- 組織として営業力を底上げしたい経営者
であれば、この本はまさに「現場で血肉になるバイブル」になるでしょう。
2. 書籍の概要:著者・出版背景・構成と対象読者
著者:米倉達哉 氏とは?
米倉達哉氏は、営業コンサルティング会社「シェルパワークス株式会社」の代表取締役。
同社のミッションは「日本の営業を元気にする」。氏は数多くの営業組織に入り込み、成果を出すチームを構築してきたプロフェッショナルです。
出版社と刊行の背景
本書はクロスメディア・パブリッシングより刊行されました。
出版背景には「営業のDX化が進む一方で、“成果が属人化している”という矛盾」を解決したいという問題意識があります。
構成と特徴
本書では、以下の7つのマネジメントを体系化して解説しています。
- プロセスマネジメント
- 顧客マネジメント
- 人材マネジメント
- 市場マネジメント
- 戦略マネジメント
- 組織マネジメント
- ビジョンマネジメント
どの章も実務的かつフレームワーク的に整理されており、読み手が自社に応用しやすい構成になっています。
3. 要点まとめ
### プロセスマネジメント:成果は「行動の再現性」から始まる
営業の成果は偶然でも気合でもなく、「プロセスの管理」から生まれます。
本書では、営業活動を以下のように再定義しています。
「お客様とともにプロセスを前に進める活動」
つまり、売上という結果に至るまでの「フェーズ」と「アクション」を整理し、チーム全体で共通認識を持たせることが、営業組織における生産性のカギ。
具体的には、「フェーズ分解→目標設計→KPI設定→進捗モニタリング」という手順で、“勝利の方程式”を見える化することが推奨されています。
### 顧客マネジメント:感覚ではなく、戦略で顧客を選ぶ
属人的な営業は「なんとなくこのお客さんが良さそう」で動きます。
しかしそれではチームで成果を出せません。
そこで著者は「顧客評価」「案件評価」「意思決定ユニットの把握」をキーフレームにし、誰でも“良い顧客”を見極めて、適切な戦略で攻められる仕組みを構築するよう提案しています。
特に印象的だったのが、マイルストーンによる進捗設計。
顧客ごとの課題理解や合意形成を、具体的な「行動とアウトカム」で段階分けし、チーム全体で可視化・共有する仕組みは、極めて実践的です。
### 人材マネジメント:「育成は偶然ではなく設計である」
営業パーソンの育成が属人化していると、「できる人」と「できない人」の差が埋まりません。
本書では、育成を以下のように再構築することを推奨しています。
- 自己決定感を高める設計(=やらされ感の排除)
- ピグマリオン効果とストローク理論の活用
- 成果だけでなく“成長”を可視化する指導スタイル
また、教えるだけではなく、「問いかけ」による気づきを促すコーチング型マネジメントの重要性も強調されています。
さらに、ティーチングとコーチングの使い分け、フィードバックとフィードフォワードの両立が紹介されており、理論と実践の橋渡しとして非常に有効です。
### 市場マネジメント:顧客を選び抜く「戦略の入り口」
「全部の市場を相手にする」──これは中小企業が陥りがちな罠です。
本書では、市場選定のために以下の3ステップを用意しています。
- 市場セグメンテーション
- ターゲティング(理想顧客の明確化)
- ポジショニング(自社の勝ち筋定義)
さらに、ゾーン別活動指針という仕組みによって、「どの層に、どの戦略でアプローチするか」が具体的に設計されます。
僕自身のクライアントでも、「誰に売るか」が曖昧だった組織が、このプロセスを導入することで営業効率が倍増した事例が複数あります。
### 戦略マネジメント:「やり抜ける戦略」だけが意味を持つ
戦略マネジメントでは、現場レベルへの“落とし込み”にフォーカスが当たります。
どれだけ立派な戦略を作っても、行動に落とし込まれなければ意味がありません。
そこで本書では、
- クロスSWOTによる戦略立案
- バランススコアカードによる重点指標の設計
- 戦略マップとモニタリング体制の構築
といった実務に即したアプローチが解説されており、特に中間管理職の行動変容に強く効く内容です。
### 組織マネジメント:信頼と役割認識の再構築
成果を出す営業チームに不可欠なのが、「チームワーク」と「役割の明確化」です。
本書で紹介されている以下の要素は、まさに組織変革の核心。
- チームバリューの共通理解
- チーム論理とNO.2の役割設計
- フォロワーシップの強化
- 会議体の再設計(ファシリテーション力の強化)
特に印象的だったのは、「リーダーシップは1人で担うものではない」という視点。
メンバーに自発的に動いてもらうために、構造と対話の場を意識的に設計することがリーダーの役割だと喝破しています。
### ビジョンマネジメント:「人は理屈では動かない」
営業マネジメントの最上位に位置づけられているのがビジョンマネジメント。
目的が明確でなければ、営業活動は惰性になり、顧客にも響きません。
本書では、次の6ステップでビジョンを組織に浸透させる方法が紹介されています。
- 全社ビジョンの理解
- 外部環境をビジョン文脈でとらえる
- チームミッションの明確化
- 対話による共感づくり
- チームビジョンの言語化
- 日常的な共有と習慣化
このプロセスを経ることで、組織の一人ひとりが「自分の役割と営業の意義」を再定義し、行動が自然と変わっていくという設計思想が全体を貫いています。
4. 印象に残った言葉・フレーズ
「営業は、“お客様とともにプロセスを進める”活動である。」
この言葉は本書の冒頭で語られますが、営業の本質を突いた定義だと感じました。売ること=ゴールではなく、信頼と共創のプロセスの中に営業の価値があるという視座は、僕の経営支援にも深く通じています。
「行動すれば誰もが成果を出せるマネジメント体系をつくること」
これは、いわゆる“天才頼み”の営業から脱却するための指針として、すべての営業リーダーに突き刺さるはずです。
5. 中小企業診断士としての考察・経営者視点での価値
この書籍の価値は単なる営業ノウハウ本ではなく、「営業組織全体の再設計書」である点です。
僕のように経営改善や組織開発の現場に立つ人間にとって、このようなマネジメントモデルの体系化は実務に直結します。
特に次の3点は、診断士的な視点で非常に活用価値が高いと感じました。
- 営業戦略の再構築にクロスSWOTを使える点
- 属人化リスクを防ぐナレッジの構造化
- KPI設計とマネジメントの統合による再現性強化
中小企業の営業組織が“脱・ブラックボックス化”するための指針として、経営者に必読の一冊です。
6. この本が挑戦者に与える影響・実践で活きる場面
本書の内容は、以下のような現場で即活用できます。
- 新任営業マネージャーがチーム体制を再設計する時
- 営業会議を変革し、行動変容を促したい時
- 経営者が営業部門に「成果が出る仕組み」を導入したい時
- 営業のDXを進めたいが、効果が出ていない時
“チームで勝つ”という概念に立ち返りたいすべての挑戦者に、確かな羅針盤を与えてくれる書籍です。
7. 誰におすすめか?どう使えば効果的か?
おすすめ対象者
- 営業部門のマネージャー・リーダー
- 士業やコンサルタントで営業組織の支援を行う方
- 成果が属人化していると感じている経営者
- SFA導入やCRM活用に悩む中小企業
効果的な使い方
- 第1章のプロセスマネジメントから読み進める
- 各章末のフレームワークを自社用に再構築して試す
- チーム会議の中で「共有→言語化→改善提案」の流れを回す
8. 関連書籍との違いと併読提案
書籍名 | 本書との違い | 併読のおすすめ理由 |
---|---|---|
『THE MODEL』(福田康隆) | インサイドセールス中心の分業型モデル | 本書が包括的マネジメント体系であるのに対し、分業制理解に良い補完になる |
『営業の魔法』(中村信仁) | 感情と関係構築に重きを置いた物語形式 | 技術ではなく“在り方”の部分を補完するための読み物として併読推奨 |
『チームの力』(青野慶久) | 組織文化・心理的安全性の視点 | 本書の構造設計に、文化醸成を加えることで営業改革がより進化する |
9. 読者の悩み別「この本の使い方ガイド」
- 成果が出る営業会議のやり方がわからない
→ 組織マネジメント章の「会議設計」をそのまま取り入れる - 人が育たない・辞めてしまう
→ 人材マネジメント章で「心の報酬」と育成フレームを導入 - SFAやCRMを入れたのに使われない
→ プロセスマネジメントで「共通の型」をまず整備 - 戦略が現場に伝わらない
→ 戦略マネジメント章のバランススコアカードを活用
10. 読後すぐに実践できる「5つの行動リスト」
- 自社営業の“勝利の方程式”を定義して言語化する
- 営業会議で「案件ごとの進捗フェーズ」を共有する習慣を作る
- KPIと行動指標の両輪でチームをモニタリングする
- 人材育成において「自己決定」と「承認」の仕組みを導入
- 営業ミッション・ビジョンをチームで再定義し、毎週確認する
11. まとめ:この本が挑戦に与える希望と再現性
『セールスマネジメントモデル』は、
“できる人”が引っ張る営業組織から、
“誰でも成果を出せる”営業チームへの転換を導くバイブルです。
そのために必要なのは、仕組み、共通言語、行動習慣。
営業という属人的な世界に「再現性」という科学を持ち込む──
このテーマに真正面から挑んだ著者の知見は、今こそ必要とされています。
もしあなたが、
「一人では限界がある」と感じたことがあるなら、
この一冊がチームで勝ち続ける未来の起点になるはずです。