『やり抜く力(GRIT)』書評|成功の鍵は才能より「情熱×粘り強さ」だった【中小企業診断士が解説】

マインドセット・自己啓発

1. この本を読むべき理由

「やりたいことがあるのに、続かない」「自分には才能がないんじゃないか」と感じたことはありませんか?
挑戦のたびに挫折し、成功している人を見るたびに「生まれつきのセンスが違うんだ」と自分を納得させてしまう。僕自身、かつてそうでした。

けれども、アンジェラ・ダックワースの『やり抜く力』は、こうした思い込みを真っ向から否定します。

成功を決めるのは、才能ではなく、「情熱」と「粘り強さ」。

この本は、ビジネスやスポーツ、教育の現場など、多様な領域において成功者たちに共通する要素を科学的に分析し、明確なメッセージを与えてくれます。

「続けることの価値」に、これほど深く切り込んだ書籍は他にありません。

特に以下のような方にとって、本書は背中を押してくれる1冊になるでしょう。

  • 何かを始めても続かないと悩んでいる人
  • 周囲の「才能ある人」と自分を比べてしまう人
  • 部下や子どもなど、誰かを育てる立場にある人
  • 起業・独立など、長期戦の挑戦を考えている人

「才能の壁」に苦しむすべての挑戦者にとって、本書は光を照らす灯台のような存在です。


2. 書籍の概要:著者・出版背景・構成と対象読者

著者:アンジェラ・ダックワース(Angela Duckworth)
心理学者、ペンシルバニア大学教授。マッカーサー賞(通称「天才賞」)の受賞歴もある実力者であり、かつては教師、マッキンゼーの戦略コンサルタントも経験。自身の研究テーマは「やり抜く力(Grit)」であり、本書は彼女の研究成果と人生経験を交えて書かれた実践的な一冊です。

出版背景と評価
原著『Grit: The Power of Passion and Perseverance』は2016年に全米でベストセラーとなり、世界20カ国以上で翻訳。日本ではダイヤモンド社から邦訳版が刊行され、教育界・ビジネス界問わず広く支持されています。

構成
全13章+終章で構成されており、大きく3つの軸で展開します。

  1. Gritとは何か?
  2. Gritをどう育てるか?
  3. Gritが個人や組織にどう影響を与えるか?

具体的には、米国陸軍士官学校やプロスポーツ、起業家、芸術家など、極めてハードな環境で成果を出し続ける人たちの行動・思考・育成プロセスが膨大な事例で示されています。

対象読者

  • 起業家、個人事業主、中小企業経営者
  • 士業や専門職など、成果主義の世界で働く人
  • 新人教育・人材育成・子育てに関わる全ての人
  • 「成功」とは何かを真剣に考えているすべての人

どんな領域の人でも「情熱と粘り強さ」を求められるこの時代において、万人が読む価値のある1冊です。


3. 要点まとめ

「才能」よりも「やり抜く力」が成功を決める

本書が伝える最も重要なメッセージは、「才能よりも粘り強さが成功の鍵である」という事実です。

ダックワースは、才能と成功の相関性を否定しているわけではありません。ただし、才能があっても続かない人は多く、逆に凡庸に見える人でも情熱と努力を重ねた結果、圧倒的な成果を残しているといいます。

特に注目すべきは、彼女が提唱する成功の方程式:

スキル(能力) = 才能 × 努力
達成(成果)= スキル × 努力

つまり、努力は二乗で効いてくる。努力は才能よりも何倍も重要だということです。

「情熱」と「粘り強さ」の両輪がGritを形づくる

多くの人が誤解しているのは、「Grit=我慢強さ」だという点です。

しかし実際は、「長期にわたって同じ目標に情熱を持ち続ける力」こそがGritの本質です。

例えば「興味が湧くことを転々とする人」と「10年以上、同じテーマを深掘りし続ける人」では、後者にこそGritがあります。著者はこれを「情熱」と「粘り強さ」という2つの要素に分けて説明しています。

両者が融合してこそ、人は真の成果に到達できる。これが本書を貫くロジックです。

Gritは「育てられる能力」である

本書のもう一つの重要な主張は、「やり抜く力は生まれつきではなく、育てられる」という点です。

著者自身も小学生時代に「特別進学クラス」に落ちた経験を持ちながら、学びを重ねて名門大学に進学し、最終的にマッカーサー賞を受賞するまでに至りました。

この変化の背景には、「適切な環境」「フィードバック」「目標の設定と継続」があったといいます。

また、親・教師・上司など、周囲の人間がGritを育む環境を用意できることも、科学的に実証されています。

次のセクションでは、印象的な言葉やフレーズ、そして中小企業診断士としての視点からの価値を深掘りしていきます。

4. 印象に残った言葉・フレーズ

「長い目で見れば、才能よりも重要なのは、グリット(やり抜く力)なのよ」

この一節は、著者が父親との会話を通じて繰り返し語られるテーマであり、まさに本書全体を象徴するフレーズです。
著者の父親は、常に「お前は天才じゃない」と語り、才能への偏重を続けていました。
そんな中で著者は自らの人生経験と心理学的研究を通じて、「成功は才能だけでは決まらない」という確信に至ります。

このフレーズは、単なる精神論ではなく、実証されたメッセージです。
「粘り強く情熱を持ち続けた人が最後に勝つ」——それは、僕自身が経営者として事業を立ち上げ、失敗や困難を乗り越えてきた中でも痛感していることです。

「才能がすべてではない」と心から言える人は、本当の意味で挑戦者であり、リーダーになれると感じます。


5. 中小企業診断士としての考察・経営者視点での価値

僕自身、中小企業診断士として多くの経営者や起業家と向き合ってきました。
その中で常に感じるのは、「やり抜けるかどうか」が事業の生死を分けるということです。

たとえば、最初の3年以内に廃業する企業が7割近いというデータがあります。
それはアイデアやスキルの問題ではなく、「継続できる環境と心の設計」が整っていないからです。

本書では、「継続」を生む要因として以下のような要素が挙げられています。

  • 明確な長期目標(最上位目標)の存在
  • 日々の積み重ねと成長実感(意図的な練習)
  • 周囲からの期待と支援(環境要因)

これはまさに、経営に必要な「ビジョン設計」「仕組みづくり」「人間関係構築」に他なりません。

診断士的視点から言えば、本書は「戦略と実行をつなぐ力=粘り強さ」の科学的根拠を明確に示してくれている名著です。
組織のPDCAがうまく回らない、採用した社員がすぐ辞める、という悩みの根本にも、この「Grit不足」があるケースが多いのです。


6. この本が挑戦者に与える影響・実践で活きる場面

本書が真にすごいのは、単なる成功者の紹介や理論に留まらず、「誰もがGritを高められる」と実践的に教えてくれる点にあります。

実践で活きる具体的な場面例

  • 起業直後の不安な時期に:
    売上ゼロの中でも「今日できることをやる」「明日もまたトライする」という姿勢が継続の鍵になります。
  • 採用・人材育成の場面で:
    学歴やスキルよりも、「やり抜けるか」を見極める採用が重要になる。
    Gritスコアのチェックや過去の継続経験に注目すべきです。
  • 子育て・教育の中で:
    本書では、「最上位の目標を持つ」ことが子どもの成長にも影響することが明示されています。
    だからこそ、好きなことを探し、育む時間を持つことが重要。
  • 組織マネジメントの現場で:
    部下が途中で辞める理由の多くは「やる意味を見失っている」から。
    ミッションやパーパスを組織全体で共有する必要があります。

このように本書は、経営者・起業家・教育者・親など、多くの立場で「行動を支える指針」として機能します。

次のセクションでは、「どんな人にどのようにおすすめできるか」、そして関連書籍との比較に触れていきます。

7. 誰におすすめか?どう使えば効果的か?

『やり抜く力』は、どのようなフェーズの人にも価値がありますが、特に以下のような読者層には刺さります。

起業を考えている人へ

「起業したいけれど、何から手をつければいいかわからない」「本当に自分にできるのか不安」。
そんな初期の壁に直面した人にとって、最も大切なのは“継続できる根拠”です。
本書を通じて、「今すぐ結果が出なくても、進んでいる」という実感が持てるようになります。

既に走り始めた経営者へ

事業がある程度進んでくると、資金繰り・人材育成・顧客獲得など、あらゆる壁が次々と襲いかかってきます。
本書は、そうした中長期戦を戦うための「精神設計図」として使えます。

子どもや若手を育てる立場の方へ

家庭や教育、あるいは社内教育の場でも、「才能を褒める」のではなく「努力を称える」視点が求められています。
本書には、「Gritを育てるための育て方・環境設定」の具体的手法も記されており、教育関係者にも極めて実用的です。

活用方法:読むだけで終わらせない3ステップ

  1. 自分の「最上位目標」を言語化してみる
  2. これまで継続してきたことを振り返り、Gritスコアを自己評価する
  3. 習慣化の仕組みを取り入れ、実験的に1つ行動を始めてみる(例:朝10分の意図的練習)

8. 関連書籍との違いと併読提案

『一万時間の法則』(マルコム・グラッドウェル)との違い

グラッドウェルの主張では「成功には1万時間の訓練が必要」とされます。
しかし『やり抜く力』は、ただの“量の継続”ではなく「目的を持った情熱と粘り強さ」を重視しており、より実践的かつ精神的支柱に近い内容です。

『スタンフォードの自分を変える教室』(ケリー・マクゴニガル)との併読

こちらは「意志力」を鍛える方法に焦点を当てています。自己管理力とやり抜く力は密接に関連しており、併読することで「感情のコントロール」と「目標の持続」の両面から自己変革を支えられます。

『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー)との親和性

「人格主義」による成功を説くコヴィーの哲学とも共鳴します。
特に「終わりを思い描くことから始める」という習慣は、Gritにおける「最上位目標の明確化」と重なり合います。


9. 読者の悩み別「この本の使い方ガイド」

悩み・課題この本の読み方・注目ポイント
何をしても3日坊主で終わってしまう第5章「やり抜く力がないとはどういう状態か?」を読んで、継続しやすい環境づくりに目を向けてみる
仕事が辛くて意味を見出せない第9章「目的を見出す」で、他者貢献型の目的意識に気づける可能性がある
才能の差に悩んでいる第2章「才能では成功できない」で、努力が二重に成果へ結びつくロジックに納得できる
部下や子どもを育てる立場にある第10〜12章にかけて、Gritを「育てる」ための科学的手法と事例がまとめられている
モチベーションが続かない第7章「成功する練習の法則」と第9章「希望を持ち続ける力」で、日々の工夫や習慣形成に関するヒントが得られる

悩みに応じて読み解くことで、あなた自身の「持続力」を科学的に強化するヒントが得られます。

10. 読後すぐに実践できる「5つの行動リスト」

本書を読んだ直後に「何をすればいいか?」を明確にしておくことは、Gritを自分のものにする第一歩です。以下の行動は、僕自身も日々実践していることです。

  1. 最上位の目標を紙に書き出す
  • 自分が10年後も追いかけたいと思えるテーマや志を「言語化」してみましょう。短期目標は変わっても、最上位の目標は不変です。
  1. 毎日の小さな習慣を「固定」する
  • たとえば「朝の30分を自己投資時間にあてる」「週1回、継続ログをつける」など、Gritを強化するための“日課”を設けてみてください。
  1. Gritの高い人と関わる
  • 本書にもあるように、人は周囲の価値観に影響されます。目標に向かって粘り強く努力している人のそばに身を置くことが、Gritを刺激します。
  1. 挫折経験を書き出し、そこから得たことを明確にする
  • 本書では、失敗からの「回復力」こそGritの核心とされています。過去の失敗が今の糧になっていることを認識することが重要です。
  1. 自分の「成長曲線」を確認する時間を持つ
  • 進んでいる実感が得られないと、Gritは続きません。毎週1回、自分の成長ポイントを記録し、可視化しましょう。

11. まとめ:この本が挑戦に与える希望と再現性

『やり抜く力』は、才能や環境の差を超えて、誰でも成果にたどりつける可能性を教えてくれます。
それは決して“精神論”ではなく、科学に裏打ちされた「希望」です。

本書が挑戦者に与える最大のギフトは、「あきらめなければ、夢は近づく」という実感です。

  • Gritは才能ではない。
  • Gritは後天的に育てられる。
  • Gritは環境によっても伸びる。

これは、すべての挑戦者にとって強烈なメッセージです。

経営者、起業家、士業、子どもを育てる親——いずれの立場においても「継続」は鍵になります。
その力をどう育てるか?どう支えるか?を考えるうえで、『やり抜く力』は極めて実用的かつ再現性のある指南書だと言えるでしょう。


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