『人を動かす』書評|全起業家・士業が読むべき“人間関係の原則”大全【BookLog.92】

マインドセット・自己啓発

1. この本を読むべき理由

「人間関係の悩みが9割」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。
ビジネスの現場でも、家庭でも、組織でも、人と人の間に立つ僕たち経営者やリーダーにとって、“人を動かす”スキルは、売上よりも重要な資産になり得ます。

けれど現実はどうでしょうか。
部下が動かない。お客様との信頼関係が築けない。交渉がうまくいかない。そんなとき、つい「相手が悪い」と言いたくなりますよね。

でも、カーネギーはそれを一刀両断します。
「盗人にも五分の理を認めよ」と。

『人を動かす』は、時代を超えて読み継がれる“人間理解”の名著です。僕自身、中小企業診断士として多くの経営者や従業員と関わるなかで、この本の内容がまさに「現場で使える生きた知恵」であることを実感しています。

今、対人関係で悩んでいる人。部下や家族とのコミュニケーションにモヤモヤしている人。
そのすべてに、この本は「答え」ではなく「行動のヒント」を与えてくれるはずです。


2. 書籍の概要:著者・出版背景・構成と対象読者

本書の原題は『How to Win Friends and Influence People』。
1936年にアメリカで初版が発行されて以来、90年近く読み継がれている伝説のベストセラーであり、全世界で3000万部以上を売り上げた「自己啓発書の原点」です。

著者はデール・カーネギー。アメリカ中西部出身の実業家であり、人前で話すことが苦手だった自身の経験をもとに「人間関係の講座」を開発。そこから生まれた体系が、この一冊に凝縮されています。

構成は以下の4部から成り立っています:

  • 人を動かす三原則
  • 人に好かれる六原則
  • 人を説得する十二原則
  • 人を変える九原則

読者層として想定されているのは、あらゆる年代・業種のビジネスパーソンです。
ですが特に、組織のリーダー、営業職、起業家、部下を持つマネージャー層には必読の一冊です。
実際に僕自身、経営者として、そして人材育成支援を行う中小企業診断士として、顧客・従業員・提携先との関係構築においてこの書から多大な示唆を受けました。


3. 要点まとめ

「批判は百害あって一利なし」

本書の冒頭から強烈に語られるのは、“批判の無力さ”です。
たとえ相手が間違っていたとしても、非難や指摘は相手の自己防衛本能を刺激するだけ。
結果的に、こちらの意図が伝わらなくなるのです。

これは心理学でも証明されている事実であり、僕も顧問先の組織マネジメントで何度も体感してきました。
「間違いを叱る」のではなく、「共に気づく」姿勢こそが、信頼と行動を引き出す鍵です。

「重要感を持たせる」

人間が本能的に求める欲求。それは「重要感=自分は認められているという感覚」です。
これを相手に感じさせるだけで、人は劇的に変わります。

報酬より、待遇より、言葉より。
「あなたを必要としている」というメッセージは、部下や家族を自然に動かす強力な原動力になります。

僕も、スタッフ面談の際にはまず“本人の存在価値”に言及するよう意識しています。

「誠実な関心を寄せる」

人に好かれたいなら、まずは“自分から関心を示す”こと。
しかもそれは「誠実な」関心でなければ意味がありません。

うわべだけの「営業スマイル」や「社交辞令」は、むしろ相手に不信感を抱かせます。

あなたが誰かに対して本当に興味を持ち、尊重して接すると、その気持ちは必ず相手に伝わります。
だからこそ、コミュニケーションは“話す”より“聴く”が先なのです。

4. 印象に残った言葉・フレーズ

「批判は蜂蜜ではなく、蜂である」

この一文は、カーネギーが説く「批判の無益さ」を象徴するフレーズです。
人は本能的に賞賛を求め、非難を恐れる存在であり、たとえどんなに正当な理由があろうと、非難されると自尊心を傷つけられ、心を閉ざしてしまうのです。

この言葉が特に心に刺さったのは、僕自身が過去に“正論”で人を動かそうとして失敗した経験があるからです。
「正しさ」より「関係性」が大切――この本は、リーダーシップにおける順番の大切さを教えてくれます。

「人は、自己の重要感を満たすために生きている」

この名言もまた、多くの経営者や上司が忘れがちな視点です。
人は報酬や命令で動くのではなく、“自分が価値ある存在だと実感する”ことで動き出すのです。
これは「社員が定着しない」「やる気が続かない」といった現場の悩みに直結する本質です。


5. 中小企業診断士としての考察・経営者視点での価値

中小企業診断士として現場支援にあたる中で、組織や人材育成の課題は避けて通れません。
特に中小企業の場合、少数精鋭であるがゆえに、一人ひとりのパフォーマンスや感情の波が、事業全体に直結します。

そのときに必要なのは、難しいマネジメント理論よりも、この本にある「人間心理の本質」を掴むことです。

たとえば、部下が指示通りに動かないとき。
多くの経営者は「言ったのにやらない」と嘆きますが、そこに“納得”や“尊重”がなければ、人は動きません。
『人を動かす』は、その根源にある“感情”へのアプローチを教えてくれる。

また、社員のモチベーション維持に悩む場面でも、「心から褒める」「小さな成功に期待を寄せる」「名前を覚える」といった具体策は、すぐにでも現場で使える“技術”です。

僕の顧問先でも、実際にこの本に書かれた原則を基に「面談ルール」を見直したことで、退職率が改善されたケースもあります。
それほど、この書は“人の心を扱う経営”の教科書だといえます。


6. この本が挑戦者に与える影響・実践で活きる場面

本書の最大の特徴は、「読むだけで終わらない」という点にあります。
読了後、多くの読者は「まず誰かに優しくしよう」「相手の話をちゃんと聴こう」といった行動を無意識に取り始めるはずです。まさに、行動の書です。

特に以下のような挑戦者に、即効性があります。

  • 新規事業の立ち上げで社内を巻き込む必要がある人
  • 営業で「売る」より「信頼を得る」ことに課題を感じている人
  • 士業やコンサルタントとして、顧客との信頼構築を深めたい人
  • 起業初期で人間関係に不安があるフリーランス

これらの人々にとって、本書は「人間関係の不安を自信に変える」処方箋です。

また、経営者であれば、従業員との面談や日常会話で活用できる“問いかけ”や“承認の技術”が満載。
“人を責めずに、期待を伝える”という技法は、現場での即実践に最適です。

7. 誰におすすめか?どう使えば効果的か?

この本をおすすめしたいのは、単に“人に好かれたい”人ではありません。
むしろ、以下のような「役割の中で、人を導く立場」にある人にこそ強く推奨します。

  • 経営者や起業家:社員や顧客との信頼関係構築に悩む場面が多い
  • 士業・コンサルタント・FP:信頼が仕事の土台となる職種
  • 新規事業の担当者や管理職:他部署を巻き込む際に説得力と共感力が必要
  • 営業職・接客業:短時間で関係構築し、成果に繋げる必要がある人

特に効果的なのは、「この本を読んだ直後の7日間で、毎日1つ実践する」と決めること。
本書に書かれている“人を動かす原則”は、どれもシンプルで、すぐに実行可能なものばかりです。

たとえばこんな使い方:

  • 1日目:「今日は笑顔を意識して全員に挨拶してみよう」
  • 2日目:「名前を覚える努力をして、相手に伝えてみよう」
  • 3日目:「部下の小さな行動をほめてみよう」
  • …といった形で、自分にできる範囲から“意図的に”取り入れること。

本書は、“読むだけでは変われない”ことを自覚させてくれる構成になっているため、「読む→試す→気づく→また読む」というループで使い倒すのが理想です。


8. 関連書籍との違いと併読提案

比較書①『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー)

『7つの習慣』が「人格を磨く」という内面的アプローチに重点を置いているのに対し、
『人を動かす』は「対人関係における行動」の具体策に直結しています。

つまり、7つの習慣=自分を整える本人を動かす=他人とつながる本という補完関係。
この2冊を併読することで、「内面→外面」の流れがスムーズになり、ビジネススキル全体が底上げされます。

比較書②『嫌われる勇気』(岸見一郎/古賀史健)

『嫌われる勇気』はアドラー心理学をもとに「他者の期待を満たさなくてよい」と説く一方、
『人を動かす』は「相手の承認欲求を満たしてこそ人は動く」とします。

一見対立しているようでいて、実はどちらも“自立した人間関係”を目指している点では共通しており、
読む順番としては『人を動かす』→『嫌われる勇気』の流れがおすすめです。


9. 読者の悩み別「この本の使い方ガイド」

読者の悩み該当する章・実践法具体的な行動例
部下が指示通り動かない第1部「人を動かす三原則」まずは褒めてから期待を伝える
初対面の人とうまく話せない第2部「人に好かれる六原則」相手の名前を呼び、関心を寄せる
会議で意見が通らない第3部「説得する十二原則」まず相手に「YES」と言わせる構成で話す
部下や顧客の信頼を得たい第4部「人を変える九原則」自分の失敗を先に語り、相手の自尊心を守る
家族との関係を良くしたい全体を通して批判を避けて、感情より事実にフォーカスする

このように、本書は目的別に「処方箋」として使うこともできます。
悩んだときにパラパラとページをめくり、「今の自分に必要な原則はどれか?」と問い直すだけでも、新たな気づきが得られるはずです。

10. 読後すぐに実践できる「5つの行動リスト」

1. 毎朝、相手の「名前」を意識して呼ぶ

カーネギーが強調する「名前はその人にとって最も心地よい音」という原則。
部下、顧客、家族、すべての人に対して「名前をきちんと呼ぶ」ことを、今日から始めてみてください。

2. 意識的に「笑顔」で話し始める

笑顔は、相手のガードを自然に下げる最強のツール。
打ち合わせ、ZOOM、商談、朝礼…すべての始まりに“笑顔”を意識して取り入れてみてください。

3. 1日1人を「心から褒める」

表面的なお世辞ではなく、「行動を具体的に、かつ誠実に」褒める習慣を始めましょう。
人は褒められることで、自分の行動を再現したくなります。

4. 相手の話を“最後まで”聴く

話を遮らず、最後まで聞く。たったこれだけで、信頼の貯金が積み上がります。
「聞き上手」は、話し上手よりも人を動かす力があると、カーネギーは繰り返し伝えています。

5. 批判や指摘を、“質問”に変換する

ついイラッとしても「なぜそうしたの?」ではなく、「どういう意図だった?」と尋ねてみてください。
批判の刃を“好奇心”に変えることが、信頼関係構築のスタートラインです。


11. まとめ:この本が挑戦に与える希望と再現性

『人を動かす』は、単なる自己啓発書ではありません。
読者が「誰かに変わってほしい」と願う前に、自らの在り方を見つめ直す鏡です。

僕自身、経営の現場や家庭の中で、「自分の正しさを通す」のではなく「相手の心に届く伝え方は?」と問うようになりました。
それは、この本が“実践者としての自分”を再教育してくれたからです。

そして何より特筆すべきは、その再現性。
本書に書かれた原則は、国も業種も立場も関係なく、誰でも実行できるシンプルなものです。

だからこそ、どんな挑戦の場面でも活用できる。
この一冊は、人生における「人間関係の戦略書」であり、「信頼を得る技術書」であり、「自己改革の道具箱」なのです。

挑戦者にとって必要なのは、「正論」ではなく「関係性」。
その意味で、本書はすべての挑戦者にとっての“武器”になると、僕は断言します。


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