『億までの人 億からの人』書評｜ゴールドマン・サックス出身の著者が明かす「兆人の思考法」とは？【BookLog.57】

1. この本を読むべき理由

「富裕層って、自分とは別世界の人たちだ」
「いくら学んでも、結果が出せるのは一部の特別な人だけ」

そんな“心の壁”を感じていないでしょうか？

実際、多くの人がこうした思い込みのせいで、「年収1億円」「資産5億円」以上の世界を初めから“諦めて”しまっています。だとすれば、その思い込みこそが、あなたの可能性を押しとどめている最大の敵です。

田中渓氏の著書『億までの人 億からの人』は、ゴールドマン・サックスで17年間にわたり、国内外の富裕層と直接関わってきた著者による「実在する成功者の共通思考」を徹底的に言語化した一冊です。

単なる成功哲学の羅列ではなく、「ごく普通の人がどうすれば億を超えるステージに辿り着けるか」を、意思決定・時間術・マネー哲学・習慣化という切り口から具体的に明示しています。

「凡人である僕にも可能性があるのか？」
この問いに、YESと応える強烈なリアリティと再現性を持った書籍です。

2. 書籍の概要：著者・出版背景・構成と対象読者

著者：田中 渓（たなか・けい）

・ゴールドマン・サックス日本法人にて17年在籍
・日本共同統括を務め、300人以上の超富裕層と直接交渉
・王族、石油資産家、ベンチャー経営者までを顧客として経験

この本は、そんな著者が超一流の富裕層から直接学び、自らのキャリアと人生に適用してきた「兆人の思考」を、一般人にも届く言葉で整理したものです。

出版背景

日本の金融リテラシーは先進国の中で極めて低いとされ、富裕層と一般層の「思考の断絶」はますます拡がっています。田中氏はこの現状に危機感を覚え、「再現性のある成功思考」を広めるべく本書を執筆。

いわゆる「稼ぎ方のテクニック」ではなく、資本形成に必要なマインド・意思決定・時間・人間関係の在り方を軸に書かれた“富裕層の習慣書”です。

構成（全6章）

1. 富裕層の思考：リスク感覚と未来設計
2. お金の哲学：消費と投資の明確な線引き
3. 富裕層の時間術：1日24時間をどう設計するか
4. 習慣：学び・運動・意思決定のルーティン
5. 人間関係：信頼資本をどう築くか
6. 兆人の世界観：お金の先にある「豊かさ」の定義

想定読者

・起業を目指す若手（20〜40代）
・売上はあるが資産形成できていない経営者
・副業や投資を始めたばかりの挑戦者
・組織内で新規事業を任された中間管理職

3. 要点まとめ

3-1. 「給与依存」は最大のリスク

本書の冒頭から一貫して語られるのが、「給与だけの生活は極めてハイリスクである」という警告です。
著者はリーマンショック後、ボーナスゼロ・9割の人員削減という壮絶な現場を体験し、「給与は有限であり、時代の変化に脆弱だ」という事実を突きつけられました。

その上で、富裕層に共通するのは「収入の分散」と「お金にお金を稼がせる」意識であると強調しています。

3-2. 想像できない未来には辿り着けない

「年収1,000万円を目指す人は、絶対に1億円は稼げない」
著者は明快にそう断言します。

なぜなら、想像できないものは計画に落とし込めないからです。ゴールを小さく設定すれば、その通りの結果しか得られない。「目標の設定精度」が、資産規模を決定づけるという厳然たる事実を突きつけられます。

3-3. 投資は“余裕ができてから”では遅すぎる

「お金が貯まってから投資をしよう」
多くの人が陥るこの罠を、著者は「投資をしない言い訳」としてバッサリ斬ります。

富裕層は、資産が潤沢にあるから投資をしているのではなく、「少額でも早くから、リスクを最小限に学びながら投資する」ことを習慣にしているのです。

3-4. 「複利の魔法」を信じて行動し続ける

アルベルト・アインシュタインが「人類最大の発明」と語った複利。富裕層はこの複利を味方につけるために、次の3原則を徹底しています。

• 長期運用
• 分散投資
• 時間を味方にする

この考え方を早期にインストールすることで、数年〜数十年スパンで資産形成の軌道が大きく変わります。

3-5. 「生活習慣」が資産の多寡を決める

意外かもしれませんが、著者は「早起き」「運動」「決まった朝の思考時間」といった“地味な習慣”こそが、億を超える人に共通する要素だと説きます。

つまり、年収1億円を得る人たちは、特別な才能ではなく「凡事を圧倒的にこなす力＝習慣化能力」で差をつけているのです。

4. 印象に残った言葉・フレーズ

「Money buys freedom, but Purpose buys happiness.（富は自由を与え、志は幸せを創る）」

本書の冒頭で掲げられているこの一文に、本書のメッセージが凝縮されています。
お金はあくまで手段であり、志や目的を伴ってはじめて「豊かさ」になるという主張は、著者自身が富裕層と共に生きた経験から導かれたものでしょう。

「お金が貯まったら投資する」では一生、富裕層になれない

読者の行動を変える強烈な一言です。
行動を先延ばしにする癖がある人ほど、この言葉の意味を何度も噛みしめる必要があります。タイミングを待つのではなく、自ら「仕掛けにいく」姿勢が富裕層マインドです。

5. 中小企業診断士としての考察・経営者視点での価値

この書籍は、診断士が企業や個人事業主に対して助言する際に、非常に有効な「マインドモデル」となり得ます。特に以下の点が価値ある内容です。

• 収入の多様化 → 事業ポートフォリオの拡張\n- 投資と支出の分離 → 資本効率の再設計\n- 時間最適化 → 生産性の最大化\n- 習慣化技術 → 戦略遂行力の向上

経営戦略や資金繰りの話だけでなく、「経営者本人の思考習慣」にまで踏み込んで支援するヒントが詰まっています。

6. この本が挑戦者に与える影響・実践で活きる場面

• 「副業を始めたいけど怖くて踏み出せない」人に、最初の一歩を踏み出す勇気を与える
• 「人間関係に疲れて孤独を感じている」個人に、信頼資本の構築方法を提供する
• 「時間がない」が口癖になっている人に、「時間の再設計」の考え方を示す

特に、日々の業務に忙殺され、意思決定と学びの時間を失っているビジネスパーソンにとっては、本書を通じて人生の主導権を再び握るきっかけとなるはずです。

7. 誰におすすめか？どう使えば効果的か？

おすすめの読者

• 会社員 → 副業・起業を考えているが一歩踏み出せない人
• フリーランス → 時間管理・収入の再設計をしたい人
• 経営者 → 利益が出ているのに、資産形成がうまくいっていない人

効果的な読み方

1. まずは第1章・第3章を熟読し、今の収入源と投資マインドをチェック
2. 第4章の時間術を使い、1日30分の自己成長時間を確保
3. 最終章まで読んだら、自分の理想のライフスタイルを再設計してみる

8. 関連書籍との違いと併読提案

書籍名	著者	特徴	本書との併読メリット
『バビロン大富豪の教え』	ジョージ・S・クレイソン	古典的な資産形成の原則	歴史的文脈と現代的リアリティの融合
『金持ち父さん貧乏父さん』	ロバート・キヨサキ	キャッシュフロー視点	投資概念の再確認に最適
『非常識な成功法則』	神田昌典	モチベーション中心の成功論	習慣×思考法の相乗効果が期待できる

9. 読者の悩み別「この本の使い方ガイド」

読者の悩み	読むべき章	理由
副業を始めたい	第1章・第3章	マインドセットと初期行動の指針になる
投資の知識がない	第2章・第3章	投資哲学と基礎的な分散思考を学べる
時間に追われている	第4章	時間設計と緊急度・重要度の思考法
モチベーションが続かない	第5章	習慣化・学びの継続に必要な要素を網羅
人間関係に不安がある	第6章	信頼を資本に変える具体的ノウハウ

10. 読後すぐに実践できる「5つの行動リスト」

1. 現在の収入源をすべて紙に書き出し、「給与以外」の収入を模索する
2. 投資に回せる月額予算を決め、まず1万円から運用開始
3. 1日30分の「自分のための学び時間」をスケジューラーに固定する
4. 毎週1回、支出の棚卸しと“浪費”の見直しを行う
5. SNSやリアルの交流から「新たな人脈づくり」を1件試みる

11. まとめ：この本が挑戦に与える希望と再現性

この本の最も大きな魅力は、「兆の世界」に触れてきた著者が、そのリアリティを“届く言葉”で語っていることです。凡人である僕たちにもチャンスがある。そう確信させてくれる具体と再現性のバランスは秀逸です。

また、単に「稼ぎ方」ではなく、「どう生きるか」「何を大切にすべきか」という生き方レベルにまで視点が引き上げられる構成となっており、本当の意味で“人生が整う”一冊でもあります。

12. 書籍購入リンク