Contents
1. この本を読むべき理由
「どうすれば人が動く組織をつくれるのか」「リーダーとしての在り方とは何か」──これは、起業家や個人事業主、中小企業経営者にとって、日々の実務を超えた“本質的な悩み”ではないでしょうか。
会社を成長させるためには、戦略やマーケティングといった「技術」だけでなく、社員の心をひとつに束ねる「リーダーシップ」が欠かせません。しかし、そのリーダーシップの“原点”を、誰も教えてはくれません。
本書『経営のこころ』は、経営の神様・稲盛和夫氏が、長年にわたる実践から得た“会社を伸ばすための心の法則”を余すことなく語る一冊です。単なる精神論ではなく、京セラ・KDDI・JALという名だたる企業を率いたリアリティある教訓が詰まっています。
本書は、「理念なき成長に限界を感じている」「戦略だけでは人が動かない」「会社をもっと良くしたいが、正解が見えない」──そんな“挑戦者”にこそ読まれるべき、経営哲学の教科書です。
2. 書籍の概要:著者・出版背景・構成と対象読者

著者:稲盛和夫(いなもり・かずお)
京セラおよびKDDIの創業者であり、経営破綻した日本航空(JAL)の再建にも成功した、日本を代表する経営者。経営者人生の集大成ともいえる数々の著作を通じて、「利他の心」と「人間として正しいことを貫く」哲学を提唱してきた。
本書は、PHP研究所が発行する「稲盛ライブラリー」シリーズの一冊として、2022年に刊行された。
出版背景
新型コロナウイルスによって、企業経営の在り方が大きく問われた時代。経営者やリーダーに対する“指針の欠如”が顕在化する中で、本書は「経営の本質」を問い直すための書として編まれた。
構成
- 第1部:人をたばねるこころ
- 第2部:組織を活かすこころ
- 第3部:事業を伸ばすこころ
- 第4部:未来をひらくこころ
各章は「理念・哲学」「社員との関係」「判断の原理原則」「創造性」など、経営のあらゆる局面をカバーしている。
対象読者
- 起業を志す20〜40代のビジネスパーソン
- 現役の中小企業経営者・個人事業主
- リーダーシップを求められる管理職・士業
- 経営の「思想」を学びたいすべての実務家
3. 要点まとめ
1. 経営の中心に「人の心」を据える
稲盛氏は一貫して「経営は心がすべて」と説きます。モノやカネ以上に信頼でき、強固な経営基盤となるのは“人の心”であると述べています。
社員と経営者が本気で信頼し合い、感謝し合い、誠を尽くし合う──この関係があってこそ、どんな逆境も乗り越える組織が生まれます。
2. リーダー自らが「燃える闘魂」であれ
経営者は、自ら率先して「命をかける覚悟」で挑まなければならない。言葉で鼓舞するのではなく、自らの姿勢で見せる。それが周囲の心に火を灯し、やがて“自燃性人材”を育てると語られています。
この「覚悟」の浸透こそが、理念浸透の核心です。
3. 利他の心で経営を行う
「正しいことを、正しいままに貫く」。これが稲盛経営の哲学の根幹です。目先の利益や効率性ではなく、人間としての道理を優先する。それが巡り巡って信頼を生み、事業の持続的成長に繋がるのです。
「利他」は精神論ではなく、競争優位を築く“戦略”でもあるのです。
4. 印象に残った言葉・フレーズ
「心のこもった製品、真心が入った製品は、一発で分かります。」
この一文は、単なる製品の良し悪しではなく、「仕事に対する姿勢」がいかに相手に伝わるかを示しています。稲盛氏は、「手を抜いていないことは、誰にでも伝わる」と断言します。この言葉の裏には、「人の心」が経営の中心であるという信念があり、どれほど高度な技術や仕組みがあっても、そこに“心”がなければ企業は長続きしないという厳しい現実が見え隠れしています。
「企業経営とは闘いである。逃げれば、俺が機関銃で撃ってやる。」
この強烈な言葉は、京セラの黎明期に営業社員を叱咤激励したときのもの。荒々しく聞こえるが、背景にあるのは「社員とその家族の生活を守るためには、甘さを捨ててでも闘え」という“徹底した責任感”です。
5. 中小企業診断士としての考察・経営者視点での価値
本書の最大の価値は、「リーダーの“思想”が、組織の命運を左右する」ことを再認識させてくれる点にあります。
私自身も多くの中小企業支援に関わるなかで、「戦略は正しいのに、なぜか社員が動かない」「制度だけ整っていて、なぜか成果が出ない」といった悩みに直面することがあります。その多くは、“リーダーの覚悟不足”や“理念の空洞化”に起因しています。
稲盛氏が語る「利他の精神」「感謝と誠実」「心を通わせることの価値」は、どれも表面的なノウハウではなく、“経営の根底に流れる水脈”のようなものです。
中小企業にこそ、本書が語る「心の経営」が必要です。資本力では大手に敵わない中小企業が、唯一対抗できるのが“人と心”です。
6. この本が挑戦者に与える影響・実践で活きる場面
本書は、単なる読書体験にとどまりません。実際の経営の場面で、以下のような場面において即効性を持ちます。
- 採用時:理念に共感する人材を採るか、スキルで選ぶか。迷ったときに「心で繋がる集団」の意味を再確認できます。
- 離職率の高さに悩んでいるとき:「従業員との信頼関係」の作り方を根本から見直す機会になります。
- 新規事業を始めるとき:「利他の精神」がどのように競争優位となるか、経営判断の軸を与えてくれます。
- 評価制度を設計するとき:「成果主義」ではなく「実力主義」にする理由が明確に整理されます。
- 理念浸透をしたいとき:「言葉」ではなく「行動」で理念を伝える必要性を痛感します。
このように、本書は“読み終えた瞬間から実践できる”知見に満ちています。
7. 誰におすすめか?どう使えば効果的か?
誰におすすめか?
- 起業を志す人
スタートアップ段階で大切なのは、資金やプロダクト以上に「想い」である。本書は、事業の原動力としての“理念”を形成するヒントに溢れています。 - 従業員数10〜50名の中小企業経営者
「人がなかなか育たない」「組織がまとまらない」と悩む経営者にとって、すぐに活かせるマネジメントの指針となります。 - 経営幹部・士業・管理職
リーダーシップを求められる立場にある人が、「自分の在り方」を問い直し、組織全体に好影響を与える存在になるための書です。
どう使えば効果的か?
- 朝礼や社内ミーティングでの引用
特に“利他の精神”や“実力主義”の箇所は、社員との共有価値として言語化しやすいです。 - 経営理念の再構築に活用
自社の存在意義や行動指針を見直すとき、本書を片手にワークショップを実施することを推奨します。 - 研修教材として活用
新任リーダーや管理職に読ませ、ディスカッションするだけで「社風改革」のきっかけになります。
8. 関連書籍との違いと併読提案
『ビジョナリー・カンパニー』(ジム・コリンズ)との比較
『ビジョナリー・カンパニー』が「永続する組織とは何か」を分析データをもとに論じるのに対し、『経営のこころ』は「経営者の生き様」から導かれた哲学です。
- 前者はロジカルに組織の仕組みを構築したい人向け。
- 後者は「組織の心」を作りたい人向け。
両者はセットで読むことで、戦略と哲学の両輪が整います。
『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー)との比較
コヴィーの教えは「個人の原則」に焦点を当てていますが、本書はそれを“集団(会社)”にまで拡張したような構成です。
併読することで、自己改革から組織改革へのステップが滑らかになります。
9. 読者の悩み別「この本の使い方ガイド」
読者の悩み | 本書の該当箇所と活用法 |
---|---|
理念が浸透せず、形骸化している | 第1部「人をたばねるこころ」 → 経営者自身が“命をかける覚悟”を持つことで、理念が生きる |
社員との信頼関係が築けない | 「感謝と誠の経営」 → お互いが“誠を尽くす”文化を日常に落とし込む |
社内の空気が冷めている・挑戦しない | 「燃える闘魂」の章 → 経営者が挑戦する姿勢を見せることで火がつく |
判断に一貫性がなく、ブレてしまう | 「正しいことを正しく貫く」 → 判断軸を“人間としての正しさ”に戻す |
利益優先で社員が疲弊している | 「利他の経営」「内部留保の真意」 → 利益は目的でなく手段であることをチームに再確認 |
10. 読後すぐに実践できる「5つの行動リスト」
- 経営理念を声に出して読み、自分の覚悟と照らし合わせる
理念が「単なる額縁」になっていないかを確認し、社員ではなくまず自分が体現できているかを毎朝確認する習慣をつけましょう。 - 1on1で「ありがとう」「信じているよ」と伝える
形式的な評価面談ではなく、日常的に“心の通う対話”を増やすことで、関係性は激変します。 - 「利他の経営」とは何かを社内でディスカッションする
稲盛氏が言う「公明正大な利益追求」とは何か、単なる奉仕精神ではない“戦略的利他”について、共通言語化を図ることが大切です。 - 全員参加の経営を目指し、改善提案制度を導入する
トップダウンではなく、社員全員が“経営者意識”を持てる環境をつくるために、小さな意見が通る仕組みを整えましょう。 - 「原点に立ち返る時間」を毎週確保する
変化の激しい時代において、戦略を変えるよりも先に、「何のためにこの事業をしているのか」を自問自答する場を定例化しましょう。
11. まとめ:この本が挑戦に与える希望と再現性
本書『経営のこころ』は、単なる“リーダー論”ではありません。
それは「どうすれば社員が言うことを聞くか」「どうすればもっと稼げるか」というテクニック論ではなく、
「どう生きるか」「誰のために経営するのか」
という、経営者にとって避けては通れない“存在意義”への問いを突きつけます。
多くのビジネス書が数字や戦略を語るなかで、本書はあえて「心」だけを語ります。それは裏返せば、「すべての成否は心に帰結する」という真実への確信です。
この本を手に取るあなたは、すでに“答えを知っている人”かもしれません。
けれど、知っているだけでは、意味がない。
この本が、あなたの覚悟を再点火させる“導火線”になることを、僕は心から願います。
12. 書籍購入リンク
