Contents
1. この本を読むべき理由
営業の現場に立ち続ける僕たちにとって、「なぜ売れないのか?」という問いは日常茶飯事です。
*「トークスクリプト通りに話したのに断られた」
*「トップセールスマンの言い方を真似したけど成果が出ない」
*「頑張ってるのに、売れない…何が悪いのか分からない」
こうした悩みに共通しているのは、「自分が発する言葉」の危険性に気づいていない点です。
『トップセールスが絶対言わない営業の言葉』は、成果を妨げる“禁句”に光を当て、売れない原因を言語レベルから明確にします。
僕自身も過去に営業で苦しんだ経験があり、「なぜ、努力しても伝わらないのか?」を深く突き詰めたことがあります。本書は、その答えを言葉選びという視点から与えてくれる、営業職の原点回帰ともいえる一冊です。
2. 書籍の概要:著者・出版背景・構成と対象読者
著者紹介
著者の渡瀬謙氏は、元リクルートでトップセールスの実績を持ち、現在は営業研修や講演活動を中心に活躍する営業のプロフェッショナル。自らも「ロベタ(あがり症)」で無口な性格だったという彼は、言葉の選び方で成果が大きく変わることを身をもって体験しています。
出版背景
本書は2017年に日本実業出版社から出版され、営業トークに悩む新人からベテランまで幅広く支持を得ています。現場でありがちな「売れない言葉」を40以上のパターンで取り上げ、そのすべてに代替案を提示しているのが特徴です。
構成
全6章構成で、それぞれに「やってはいけない言葉」とその理由、さらに「言い換え例」がセットで紹介されます。章の構成は以下の通り:
- 意外に重要な挨拶の言葉
- トークが弾む言葉
- ヒアリングの言葉
- 説明の言葉
- クロージングの言葉
- 営業マンが重視する言葉
対象読者
- 新人営業マン・テレアポ担当者
- 飛び込み営業に自信がない人
- 営業成果が頭打ちになっている中堅層
- セールスライター、コンサル、士業など、言葉を商売にしている人
3. 要点まとめ
言葉一つで商談が壊れる「営業禁句」の威力
営業で成果が出ない最大の要因は、「何を言うか」ではなく「何を言わないか」だと著者は断言します。
「お世話になります」「お忙しいところすみません」「ちょっとだけいいですか」など、良かれと思って使っていた定型句が、実は信頼構築を阻害するトリガーとなっているのです。
営業=押し売りの印象を消す「リサーチ姿勢」
「今から営業します」という態度を前面に出すと、お客様の心理的防衛本能が発動します。
本書では、“リサーチャーになりきる”という発想で、初回接触時はあくまでも「調査の一環」であることを伝えるべきと説いています。
笑顔や丁寧語も逆効果になる場面がある
「営業マンは笑顔が命」は半分正解で、半分は大間違いです。
特に初対面の飛び込みや電話では、明るすぎる声や満面の笑顔が“警戒される要因”になります。むしろ、静かに、真顔で、トーンを落として話しかけた方が信頼されやすいという実例が紹介されます。
説明ではなく“確認と共感”が売れる鍵
商品説明よりも、「お客様の話を聞く」「話を上書きしない」「ニーズを“発見”する」ことが重要だと強調されています。
セールストークの主役は営業マンではなく、お客様の言葉そのもの。聞くことの大切さと技術が丁寧に解説されています。
4. 印象に残った言葉・フレーズ
「お世話になります」は、“私は営業です。今から売り込みに入ります”という合図になっている。
この一言は、本書全体の思想を象徴するフレーズです。
日本語のビジネスマナーとして定着している「お世話になります」が、実は営業シーンでは警戒心を煽る“禁句”になっているという逆説。著者はこの点を徹底的に指摘しています。
他にも、
「飛び込み営業は、営業ではなくリサーチである」
この考え方が営業の心理的ハードルを劇的に下げます。営業が苦手な人ほど、「売らなきゃ」という思い込みに縛られ、自ら空気を重くしています。
むしろ「情報収集しに来ただけ」と捉えることで、相手にも負担をかけずに関係性を築くきっかけを作れるのです。
5. 中小企業診断士としての考察・経営者視点での価値
僕は中小企業診断士として多くの営業現場を見てきましたが、売れない営業ほど言葉に無自覚です。
本書は「何を言うか」ではなく、「何を言わないか」に焦点を当てることで、無意識の地雷を回避する重要性を説いています。
また、教育・指導の現場においてもこの本は有用です。新人研修ではセールストークを「増やす」より、「削る」トレーニングの方が即効性があることが多く、本書の「言い換え例」はそのまま教材に使えるレベルで実践的です。
さらに、経営者視点で見れば、自社の営業スタイルが時代錯誤になっていないかのチェックにも役立ちます。旧来型の「押す営業」から「引き出す営業」へシフトするための、言語戦略の指針となる一冊です。
6. この本が挑戦者に与える影響・実践で活きる場面
この本は、営業を「怖いもの」「苦手なもの」だと感じていた人にとって、視界を開く一冊です。
たとえば、
- 「電話が怖くてかけられない」
- 「飛び込み営業で門前払いばかり」
- 「クロージングで嫌われたくない」
そんな悩みを抱えている人には、“やってはいけない言葉”を削るだけで、空気が変わるという気づきを与えてくれます。
実際、僕のクライアント企業でも、本書の内容を実践して電話アポ成功率が20%以上改善した例もあります。
7. 誰におすすめか?どう使えば効果的か?
この本は以下のような人に強くおすすめです:
- 新人営業マン・就職して営業職になったばかりの人
→「何を話すか」より「何を話さないか」を知ることで成果が変わります。 - 中堅層で伸び悩んでいる営業パーソン
→テクニックよりも“不要な言葉の削ぎ落とし”がブレイクスルーになります。 - セールスコピーライター・マーケター・士業・コンサルタント
→信頼関係を壊す「地雷ワード」の棚卸しに役立ちます。
使い方としては、1章ごとに読んでは現場で実践し、トークを記録して改善するという「営業日報型」の読み方が効果的です。チェックリスト的に「言ってはいけない言葉を排除する」訓練を繰り返すと、自然と成果が安定してきます。
8. 関連書籍との違いと併読提案
本書と比較すると相補的な立ち位置にあるのが、以下の2冊です:
『営業の魔法』(中村信二)
→ こちらは「感情移入とストーリーによる営業力の強化」を扱う寓話形式の名著。一方、本書は「構造的にNGな言葉を避けることで成果を高める」現場直結型。
違い:感情 vs. 言語構造
→ 併読することで、心と技術の両輪が整います。
『影響力の武器 実践編』(ロバート・チャルディーニ)
→ 説得心理学を応用した営業手法に興味がある人は、本書の“言語ミスを避ける”という視点と補完関係にあります。
違い:心理誘導 vs. 禁句排除
→ 両方を読むことで、言葉に宿る影響力の“攻守”が理解できます。
9. 読者の悩み別「この本の使い方ガイド」
悩み | 本書の読み方 | 重点章 |
---|---|---|
電話アポが怖い | 第1章「挨拶の言葉」に全集中 | 「お世話になります」はNG |
飛び込み営業で門前払い | 初回訪問の“非営業的”な話法を習得 | 「お忙しいところ…」は逆効果 |
セールストークが空回り | 相手の話に“上書きしない”訓練 | 第2章&3章 |
ヒアリングが苦手 | 「ニーズの探り方」技術を仕込む | 第3〜4章 |
クロージングが苦しい | 「追い詰めないクロージング」習得 | 第5章 |
10. 読後すぐに実践できる「5つの行動リスト」
- 「お世話になります」をやめて「少しお伺いしたいのですが」に切り替える
- 「明るすぎる声」を封印し、静かでフラットなトーンに変える
- 「ご説明させていただきます」ではなく「ひとつ確認させてください」で入る
- “営業色”を極限まで排除して「調査・リサーチ目的」に徹する
- 営業日報に「今日使ってしまったNGワード」を毎日記録する
11. まとめ:この本が挑戦に与える希望と再現性
『トップセールスが絶対言わない営業の言葉』は、売れない営業に共通する“無意識の地雷”を可視化する書籍です。
特別なテクニックや巧みな話術がなくても、「言ってはいけない言葉をやめる」だけで商談の空気は大きく変わる。
これは再現性が高く、誰でも取り組める営業改革です。
売り込み感を消し、相手の懐にスッと入り込む言葉の選び方は、どの業界にも通用する本質。
「頑張っているのに成果が出ない」というすべての挑戦者に、静かに強く背中を押してくれる一冊です。