【営業改革の教科書】『インサイドセールス』書評|訪問営業を超えて、売上を再構築する実践ガイド【BookLog.74】

セールス・組織づくり

1. この本を読むべき理由

「営業の効率が落ちてきた」「訪問が難しくなった」「テレアポは成果が出ない」「営業人材が定着しない」――
そんな悩みを抱えていませんか?

多くの中小企業経営者や営業マネージャーが感じているこの課題。その背景には、顧客の購買行動の変化と、旧来型営業スタイルの限界があります。

本書『インサイドセールス』は、まさにこの時代の転換点で営業組織を変革するための実践書です。

2. 書籍の概要:著者・出版背景・構成と対象読者

  • 著者:茂野明彦氏(株式会社ビズリーチ HRMOS事業部インサイドセールス部 部長)
  • 出版元:翔泳社(2020年発行)
  • ページ数:約270ページ
  • 対象読者
    • 営業組織を強化したい経営者
    • 成果が出ない営業現場を改善したいマネージャー
    • 営業に課題を感じる個人事業主や士業
    • 新たにインサイドセールス導入を検討している企業

構成は「導入の背景」「具体的な組織構築法」「採用・KPI設計・育成」など、インサイドセールスを導入・運用するうえでの全工程を網羅しています。

3. 要点まとめ

インサイドセールスの三位一体構造(SDR/BDR/オンライン商談)

本書の大きな特徴は、インサイドセールスを単なる「非対面営業」と捉えず、3つの役割で構成された営業機能と定義している点です。

  • SDR:問い合わせ顧客への初期接触と商談化
  • BDR:ターゲット企業への戦略的アウトバウンド
  • オンライン商談:クロージングまでを担う営業担当

この三者が連携して初めて、営業プロセス全体の生産性と成約率が高まると説きます。

営業組織の配置戦略:分業型/独立型/混合型

  • 分業型:SDR・BDRは商談獲得まで。クロージングは営業部門に引き継ぎ
  • 独立型:全ての工程を1人または1部署で完結(特に中小・SaaS企業向け)
  • 混合型:営業スタイル・商材の特性に応じた柔軟な配分

この構成は単なる人員配置ではなく、業務効率と顧客体験の両立を図る設計思想が反映されています。

オンライン営業に特化した技術と意識改革

  • Zoomやベルフェイスなどの活用法
  • オンラインならではの準備・提案・クロージング手法
  • 「訪問できないから仕方ない」ではなく「最適化のチャンス」と捉える視点

営業のオンライン化は、ただの代替手段ではなく、生産性を飛躍させる主戦略となると説きます。

KPIと評価制度の見直しで人が育つ

  • リードの質・商談化率・成約率をそれぞれ分解して設計
  • 成果だけでなく「行動プロセス」を見える化
  • 自律的に成長するチームを作る“可視化と称賛文化”

営業人材の育成にも活かせる、非常に実践的なアプローチです。

4. 印象に残った言葉・フレーズ(引用とその背景解説)

「売り手中心から買い手中心へ──。営業が変わらなければならない理由はそこにある。」

この言葉に、本書の哲学が凝縮されています。
訪問営業ではなく、顧客の課題を起点とした接点設計が、これからの営業の基本スタンスになる。その「起点」としての役割を担うのがインサイドセールスなのです。

5. 中小企業診断士としての考察・経営者視点での価値

僕自身、中小企業の支援に携わる中で、「営業活動=訪問と気合」といった固定観念に縛られている現場を多く見てきました。
しかし本書を読むと、人材不足・コスト高・営業生産性の低さといった課題に、インサイドセールスが抜本的な処方箋となり得ることがよく分かります。

導入には体制・ツール・評価指標の再構築が必要ですが、それ以上に組織として「営業の捉え方」をアップデートする覚悟が問われます。

6. この本が挑戦者に与える影響・実践で活きる場面

  • テレアポに限界を感じている事業者
  • 少人数で営業活動を最大化したいスタートアップ
  • 営業を仕組化し、再現性を高めたいマネージャー
  • 顧客対応の属人化に悩む経営者

本書は、「営業改革に挑むすべての人」のバイブルになり得る1冊です。

7. 誰におすすめか?どう使えば効果的か?

おすすめの対象

  • BtoB事業の経営者・営業責任者
  • リモート体制下で営業の打ち手が欲しい人
  • SaaS系事業者・オンライン商談に可能性を感じている方

効果的な活用法

  • 社内営業研修の教材として使う
  • 営業KPI設計や評価制度の見直し時のリファレンスに
  • スタートアップの営業戦略策定フェーズに

8. 関連書籍との違いと併読提案

書籍名主なテーマ本書との違い
『THE MODEL』マーケ〜営業までの分業戦略理論重視で抽象度が高い。具体事例は少ない
『Sales is』営業の本質と人間理解マインドセット寄り。実務ノウハウは薄め
『営業の魔法』営業の型と心理テクニック個人営業スキル中心。組織設計とは異なる

併読するなら『THE MODEL』とのセットが最適です。

9. 読者の悩み別「この本の使い方ガイド」

  • 営業メンバーの質にバラつきがある:→KPI設計とトレーニングの仕組み化
  • 属人化から脱却したい:→分業・評価制度の設計部分を活用
  • 採用に失敗しがち:→第4章「採用と構成バランス」のチェックリストを参考に
  • 営業とマーケの連携が悪い:→SDR/BDR間の連携プロセス部分を活かす

10. 読後すぐに実践できる「5つの行動リスト」

  1. SDR/BDR/オンライン商談の役割を自社に当てはめて整理する
  2. KPIと営業プロセスを分解して可視化する
  3. 営業メンバーの業務を分業可能か検討する
  4. 顧客視点でのオンライン営業体験を再設計する
  5. 書籍にあるインタビュー事例を自社に置き換えて分析する

11. まとめ:この本が挑戦に与える希望と再現性

『インサイドセールス』は、単なる営業手法の転換ではなく、組織としての在り方そのものを問う本です。

訪問に頼らない。属人化に頼らない。売り手本位から買い手本位へ。
営業を「仕組み化」し、再現可能にする。この構造転換こそが、挑戦する企業にとっての希望であり、持続成長への鍵です。

「営業とはこういうもの」という常識にメスを入れるこの1冊、あなたの会社の未来を変える力があります。

12. 書籍購入リンク

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