Contents
1. この本を読むべき理由
「少人数なのに、成果が出ない」
「チームとして機能していない気がする」
「リーダーとしてどう振る舞えばいいか分からない」
そんな悩みを抱えるすべての起業家、個人事業主、そして小規模なチームを率いる人にとって、本書『世界最高のチーム』はまさに“実践のバイブル”と言える一冊です。
タイトルに「グーグル流」とあることで、大企業やテックジャイアントの特殊な事例だと思われがちですが、実際には中小企業や日本の職場でも即活用できるエッセンスが詰まっています。
僕自身も現役の中小企業診断士として多くのチームと向き合ってきましたが、成果を生み出す組織には、例外なく“共通の原理原則”が存在します。本書はその原則を「心理的安全性」「多様性」「対話」にフォーカスして体系化したものです。
「なぜあのチームは強いのか?」「どうすれば弱いチームを立て直せるのか?」——その答えを、ロジカルに、かつ温かい語り口で提示してくれる一冊です。
2. 書籍の概要:著者・出版背景・構成と対象読者

- 著者:ビョーレレ・フェリクス・グジバチ(Piotr Feliks Grzywacz)
- 出版社:朝日新聞出版
- 出版年:2021年
- 原題:The Best Team
- 特徴:
- 元Google社員であり、人材開発責任者として「グローバル・ラーニング・ストラテジー」を担った著者によるノウハウ集
- 日本企業の現場に応用可能な視点で執筆されたビジネス書
- 「心理的安全性」をキーワードに、少人数でも成果を出せる仕組みを紹介
構成(章立て):
- 世界共通のチームづくりのルール
- 愚痴やもめごともチームにとっては価値
- 良質な会話がパフォーマンスを上げる
- 感謝と生産性の関係
- 最少の人数で最大の成果を出す方法
- 劇的に生産性を上げる仕組みのつくり方
3. 要点まとめ
「心理的安全性」がチーム力の起点
Googleが実施した「プロジェクト・アリストテレス」によって明らかになったのは、チームの生産性を左右する最重要要素は「心理的安全性」だということ。
これは「安心して発言できる空気」「自分らしくいられる空気」を指します。
この土台がなければ、いくらスキルの高い人材を集めても、能力は引き出せません。
優秀なマネージャーに共通する8つの行動
「プロジェクト・オキシジェン」による調査では、成果を出すマネージャーに共通する8項目が特定されました。
その筆頭は「良いコーチであること」。
管理職=管理ではなく、問いかけを通じてメンバーの自己認識を高め、行動を引き出す存在であることが求められます。
愚痴・もめごとは「成長の入口」
チームにおいて「愚痴」や「もめごと」を否定的に捉えるのは早計です。
むしろ、そこに価値観の違いや改善の余地が現れており、対話を通じて“選択肢”を増やしていくことが重要。
ここでも心理的安全性が前提となります。
感謝の可視化が生産性を上げる
業績や結果よりも、「ありがとう」が飛び交う組織の方が成果を出しやすいという研究結果が示されています。
本書では、感謝を仕組み化する方法として、「毎週感謝を伝えるMTG」や「ありがとうチャット」などが紹介されています。
最少の人数で最大の成果を出すには
本書の核心とも言える考え方がここです。
「7人以下のチームでなければ管理できない」「異なるタイプの3人を組み合わせると最も創造性が上がる」など、実践的で明快な指針が提示されています。
4. 印象に残った言葉・フレーズ
「マネージャーがやるべきことは、メンバーの“主体性・創造性・情熱”を引き出すこと。」
この言葉は、著者が繰り返し語るメッセージです。
業績やKPIよりも、メンバー一人ひとりの内面に火を灯すこと。
Googleという膨大な人材が集まる環境でも、“個の内面”をどう引き出すかに焦点を当てていたことが伝わってきます。
5. 中小企業診断士としての考察・経営者視点での価値
僕自身も様々な中小企業の現場で、「人が辞める/チームが崩れる/社長の孤独が深まる」という課題に向き合ってきました。
その中で、本書が提示する「心理的安全性」「コーチング的関わり」「感謝の循環」といった要素は、まさに解決のカギだと断言できます。
とくに、以下の3つの視点は経営者こそ読む価値があります:
- 少人数チームに最適なマネジメント設計
- 育成と定着を両立させる“対話文化”
- 多様性を活かすチームビルディングの再設計
6. この本が挑戦者に与える影響・実践で活きる場面
この本が力を発揮するのは、「チームとして新しいフェーズに突入したい」と感じている挑戦者たちです。
たとえば以下のような場面で、本書の内容は極めて実用的です。
- 創業メンバー数名で進めてきた事業がスケールし始めたとき
- 個人経営からチーム制への移行を目指すとき
- 新規事業を社内で任されたリーダーが初めてメンバーを抱えるとき
特に、「プレイングマネージャー」が陥りがちな罠——“目の前の業務に追われてメンバーの育成や対話ができない状態”——に気づきを与えてくれます。
7. 誰におすすめか?どう使えば効果的か?
推奨読者
- スタートアップ・小規模事業の創業者
- 中小企業の管理職・チームリーダー
- 士業事務所の所長や経営者
- 社内でプロジェクトチームを率いるミドル層
使い方のコツ
- 各章末に紹介される事例を、自社の状況に当てはめてディスカッションしてみる
- チームミーティングの冒頭に「心理的安全性」を意識した問いを用いる
- 読書会のテーマ本に設定し、チームメンバーと一緒に読み進める
8. 関連書籍との違いと併読提案
書籍名 | 主なテーマ | 本書との違い |
---|---|---|
『5つの機能不全』パトリック・レンシオーニ | チームの課題構造を物語形式で提示 | 問題解決型・読み物として優れるが、実践には抽象的 |
『ティール組織』フレデリック・ラルー | 組織進化論と自律分散 | 高度で抽象的な理論、スモールチームには不向きな場合も |
『リーダーの仮面』安藤広大 | 役割としてのリーダー行動 | 原理原則よりも厳格な“役割論”が中心 |
→本書は、これらと比べて「今すぐ現場で実行できる」「再現性のあるシンプルさ」において際立っています。
併読するなら『5つの機能不全』を合わせて読むと、機能的なチームと心理的な安心感の両側面を捉えられます。
9. 読者の悩み別「この本の使い方ガイド」
- メンバーのモチベーションが低い
→ 第2章「愚痴ももめごとも歓迎する」を読んで、「愚痴=改善の糸口」として扱う文化をつくる。 - 離職が止まらない/定着しない
→ 第1章・4章を読み、心理的安全性+感謝の習慣化を導入。 - 人数が増えて組織がバラバラになってきた
→ 第5章で紹介される「7人以下チームの原則」と「カルチャーアド」の考え方を実践する。 - 育成に自信がない/教えるのが苦手
→ 第3章・6章の「問いかけによる育成」「OKRによる自律支援」を参考にする。
10. 読後すぐに実践できる「5つの行動リスト」
- 週1の“感謝共有ミーティング”を設ける
- 感謝を言語化して伝えるだけで、チームの温度は確実に上がります。
- メンバーと1on1で「今の仕事でうまくいっていることは?」と聞く
- コーチング型マネジメントの第一歩。
- チーム内で「強み・弱み」について率直なディスカッションを実施
- 自己認識と他者認識のギャップを埋める機会になります。
- チーム人数を7人以下で最適化し、役割の重なりを見直す
- 機能よりも“協働の質”を重視する編成へ。
- 「カルチャーフィット」より「カルチャーアド」を採用基準に加える
- 組織の“多様性の筋肉”を鍛えるために有効です。
11. まとめ:この本が挑戦に与える希望と再現性
『世界最高のチーム』は、「Googleだからできた話」ではありません。
むしろ、「どんな規模・業種・地域のチームにも通用する原則」を明快に伝える一冊です。
心理的安全性、多様性、対話の質、感謝の循環、最適人数といったテーマは、
中小企業・スタートアップ・士業オフィスにおいても極めて実用的です。
僕自身、現場のコンサルティングでこの本の知見を取り入れてから、
以下のような成果をクライアントと一緒に体感してきました:
- 離職率の改善
- プロジェクト遅延の減少
- 社内のコミュニケーション品質向上
- 「言いたいことが言える」空気の醸成
この本は単なる理論ではなく、「実践の手引き」です。
挑戦するすべてのチームにとっての「原点」として、座右に置く価値があります。
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