『9割の社会問題はビジネスで解決できる』書評|社会起業家が学ぶべき実践の書【BookLog.73】

マインドセット・自己啓発

1. この本を読むべき理由(悩みに共感する)

「社会のためになることを仕事にしたいけど、どうやって始めればいいかわからない」
「収益と社会貢献を両立するなんて理想論では?」
「起業したい気持ちはあるけど、食べていけるのか不安…」

こうした葛藤を抱える起業志望者や若手経営者に、本書『9割の社会問題はビジネスで解決できる』は強烈なエールを送ってくれる。著者は、実際に世界15カ国・40以上の社会起業を同時並行で展開する田口一成氏。
社会問題に対して「ビジネスという解決手段」がどれほど強力で持続可能なのか、身をもって証明している。

本書を通じて、「収益=悪」「社会貢献=自己犠牲」といった二項対立的な考えから脱し、「持続可能で影響力のあるビジネスモデルの設計」が自分にも可能だと確信できるようになる。

2. 書籍の概要:著者・出版背景・構成と対象読者

著者:田口 一成(Kazunari Taguchi)

  • 株式会社ボーダレス・ジャパン代表取締役社長
  • 1980年生まれ、福岡県出身
  • 早稲田大学卒業後、ミスミを経て25歳で独立
  • 世界15カ国・40事業・従業員1500人超・グループ年商55億円以上
  • 代表事業:「ボーダレスアカデミー」「ハチドリ電力」など

出版背景

  • 出版社:PHP研究所
  • 発行日:2021年6月10日(第1版第1刷)
  • 本書が著者の初著作であり、実践知と思想が詰まった一冊

書籍構成

  1. 社会問題を解決するビジネスとは何か
  2. 仕組みはどうやって生まれたのか(ボーダレス・ジャパンの成長記)
  3. 実際のプロジェクト事例と仕組み
  4. 社会起業家としての実践と失敗
  5. 誰でも挑戦できる「始め方」

想定読者

  • 起業を検討している個人(特に20〜40代)
  • 現役の個人事業主や中小企業経営者
  • 社内で新規事業を任されている人材や、NPO・非営利組織で活動する人

3. 要点まとめ

社会問題をビジネスで解決できる理由

市場原理は、ニーズとお金が集まるところに人と資源を引き寄せる力がある。だからこそ、社会課題を「解決するビジネス」にすれば、自然と持続可能になる。

「恩送り経営」の概念

本書を貫く思想が「恩送り」。誰かから受けた恩を、その人に返すのではなく、次の誰かに渡していく。経営もこの考え方に基づいて設計されている。

ボーダレスグループの仕組み

  • 社会起業家を「社内起業家」として育成し、1年に複数事業を同時立ち上げ
  • 起業家に対して、法務・会計・デザイン・マーケティング支援をワンストップ提供
  • 利益は再投資に回し、次の挑戦を生む土壌に

「失敗できない」現場主義

著者は「ごめんなさい、では済まされない」と強調する。特に社会課題に挑むビジネスは、一度失敗すると「その問題は解決できない」と周囲に誤認される恐れがある。だからこそ、緻密な検証と準備が不可欠。

社会貢献と商品力の両立

単なる「善意」では売れない。社会貢献型ビジネスも、「プロダクトとして優れている」ことが条件。「良いモノを、良い意志で届ける」が基本方針。

4. 印象に残った言葉・フレーズ

「生まれたときよりも、きれいな社会にして死んでいく」

これは著者の人生のモットー。利己的な動機ではなく、「社会全体をよくしたい」という原動力こそが、困難な道を乗り越えるエネルギーになる。

5. 中小企業診断士としての考察・経営者視点での価値

本書は単なる美談ではなく、「収益構造が明確に設計されたビジネスプラン」が豊富に紹介されている。ソーシャルビジネスが「儲からない理想論」と見られがちな中、それを実行可能な事業へと落とし込む設計思想は、診断士としても学ぶ点が多い。

たとえば、月額450円で先生同士がつながるメディア「先生の学校」は、ビジネスモデル・ペルソナ設計・販路戦略が極めて実務的。他にも多数の具体事例が詰まっている。

6. この本が挑戦者に与える影響・実践で活きる場面

  • 自社のミッション再定義を迫られている経営者
  • 社会課題をビジネスで解決したいと考えている個人
  • 新規事業担当として「理念と収益の両立」に悩んでいる中間管理職

こうした挑戦者にとって、本書は理論ではなく「実践の地図」となる。

7. 誰におすすめか?どう使えば効果的か?

  • 起業前の人:自身のビジネスアイデアが社会課題と接続できるかのヒントに
  • 経営者:事業の社会的意義を見直し、採用・広報に活かす材料として
  • NPOや教育機関:資金調達に頼らない持続可能なモデル構築の参考に

読み終えたら、特に第3章の事例部分を再読し、自社・自分に引き寄せて応用するのがベスト。

8. 関連書籍との違いと併読提案

書籍タイトル著者特徴本書との違い
ビジネスの未来山口周思想寄り本書は実践的で具体例が多い
世界でいちばん大切にしたい会社坂本光司経営哲学中心本書は仕組み設計・展開に強み
ソーシャルデザイン水谷孝次非営利ベース本書は利益と意義を両立

9. 読者の悩み別「この本の使い方ガイド」

悩み読むべき章・活用法
起業したいけど何から始めていいかわからない第2章:仕組みが生まれた背景を理解
社会貢献はしたいけど、収益が出るか不安第3章:複数のビジネスモデル事例から学ぶ
自分に自信が持てない終章:著者のモットーに背中を押される

10. 読後すぐに実践できる「5つの行動リスト」

  1. 自分の「モヤモヤ」をノートに書き出す(社会課題の種になる)
  2. それをビジネスに変えるには?を逆算して考える
  3. 「先生の学校」や「ハチドリ電力」のモデルを写経する
  4. 同じ想いを持つ仲間に声をかける
  5. 収益構造のシミュレーションをして、最初の1万円を稼ぐ計画を立てる

11. まとめ:この本が挑戦に与える希望と再現性

『9割の社会問題はビジネスで解決できる』は、まさに「社会起業の再現マニュアル」であり、「信念と収益」の両立を目指すすべての人の指南書だ。著者自身が数十のプロジェクトを走らせているという「再現性の証明」があるからこそ、本書の説得力は極めて強い。

一人ひとりが「きれいな社会にして死んでいく」ことを本気で考えれば、日本の未来はもっと希望に満ちたものになる。

12. 書籍購入リンク

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