『最高のリーダーほど教えない』書評|部下が変わる「教えない」マネジメントとは?【BookLog.80】

セールス・組織づくり

1. この本を読むべき理由(悩みに共感する)

あなたは、こんな悩みを抱えていないだろうか?

  • 部下が指示待ちで、自ら動かない
  • 意見を求めても反応が薄く、会議が沈黙する
  • こちらが教えた通りにやってくれない
  • 成果を出してほしいのに、なかなか育たない

僕自身、中小企業診断士として経営支援をしてきた中で、こうした声を数多く聞いてきた。特に少人数のチームや現場主導の組織においては、リーダーが「教えすぎる」ことで、部下の成長を妨げてしまうケースが少なくない。

本書『最高のリーダーほど教えない』は、そうしたリーダーの悩みに対し、“教える”のではなく“気づかせる”という全く新しいマネジメント手法を提示してくれる一冊だ。

2. 書籍の概要:著者・出版背景・構成と対象読者

書籍名:最高のリーダーほど教えない
著者:鮎川詢裕子(あゆかわ じゅんゆうこ)
出版社:かんき出版
ジャンル:マネジメント/組織論/リーダーシップ
出版年:2020年

鮎川氏は、エグゼクティブ・コーチとして国内外で5000人以上のリーダー育成に関わってきた組織開発の専門家。本書は、彼女が現場で実践・検証してきた「気づきのマネジメント」を体系化した内容であり、組織改革の現場で即使える実用書だ。

本書は以下の5章構成:

  1. 教えないリーダーがなぜ成果を出せるのか(理論と背景)
  2. 気づきを生むための関わり方(信頼構築)
  3. 聴く力と質問力(内省の促進)
  4. 気づきを行動に変える方法(フィードバック)
  5. リーダー自身の“存在力”の磨き方(在り方)

3. 要点まとめ

「教える」は逆効果。「気づき」が人を変える

部下に答えを与えることで、一時的に問題は解決するかもしれない。だが、それでは“自分で考える力”が育たず、依存心が強くなる。
人は自分で気づいたことにしか本気になれない。感情と理性が一致したときに、初めて行動が変わる。

信頼関係が“気づき”の土台になる

「安心・安全な場」でしか気づきは生まれない。リーダーが怒らず、否定せず、評価せずに話を聞くことで、部下は本音を語るようになる。
信頼とは“存在を肯定されている感覚”から始まる。

質問力こそ、リーダー最大の武器

良い問いは、答えよりも人の内省を引き出す。「なぜできないの?」と問い詰めるのではなく、「どこでつまずいた?」「そのときどう感じた?」と問いかけるのがコツ。

4. 印象に残った言葉・フレーズ

「人は教えられた“答え”ではなく、自分の内面で実感をともなって“気づいた答え”に突き動かされる」

これは僕が最もハッとしたフレーズだ。
知識ではなく、感情に響いたものこそが行動を変える。これこそ、自己変容の真理である。

5. 中小企業診断士としての考察・経営者視点での価値

「教えすぎているリーダー」は多い。その結果、部下は指示を待ち、成長が止まる。
一方、本書の“気づき”によって自走する人材が育つと、現場が劇的に回り始める。マネジメントコストの削減にもつながる。
評価制度やOJT、会議設計に悩む経営者にとって、本書は極めて現実的な解決策を提示している。

6. この本が挑戦者に与える影響・実践で活きる場面

  • 新人育成:指導ではなく「問い」で育てる
  • 管理職研修:形式的なリーダー研修よりも即効果が出る
  • 社内コミュニケーションの再構築:1on1や面談の改善に活用できる
  • プロジェクトマネジメント:チームの主体性を最大化する設計が可能になる

7. 誰におすすめか?どう使えば効果的か?

  • 指示しても動かない部下に悩む上司
  • チームリーダーとしての自信が持てない新任マネージャー
  • 指導スキルに限界を感じているベテラン上司
  • 部下のエンゲージメントを高めたい人事・教育担当者

使い方

  • 毎週1章ずつ読み、週1回の1on1で実践
  • 部下との接し方に迷ったら“引用”を読み返す
  • 「問いリスト」をメモして、面談時に活用

8. 関連書籍との違いと併読提案

書籍名主なテーマ本書との違い
『1on1ミーティング』(世古詞一)定期面談の設計と手法フォーマット重視。本書は“在り方”に焦点
『嫌われる勇気』(岸見一郎)課題の分離と自己責任心理思想中心。本書は現場実践の具体性が強い
『ティール組織』(ラルー)組織進化論組織構造の変化。本書は日常の対話に特化

併読おすすめ

  • 『1on1ミーティング』
  • 『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』
  • 『サーバント・リーダーシップ入門』

9. 読者の悩み別「この本の使い方ガイド」

読者の悩み本書の活用ポイント
指示しても動かない第1章の「教えない」の本質を掴む
会議が沈黙する第3章の質問術を実践
信頼関係が築けない第2章の関わり方で対話の基盤を作る
フィードバックが苦手第4章の行動転換フローを導入
自分に自信がない第5章の“存在力”の項を読み込む

10. 読後すぐに実践できる「5つの行動リスト」

  1. 部下への返答を“質問”に変える
     →「どうしたらいいと思う?」と返す癖をつける
  2. 1on1ミーティングを開始
     →15分でもOK。「聴く」に徹する時間を設ける
  3. “気づきメモ”をつける
     →日報・週報に「気づいたこと」を1行書いてもらう
  4. 問いのストックを作る
     →使いやすい質問を10個ストックしておく
  5. 沈黙を“待つ時間”と捉える
     →焦らず、部下の思考が動くのを見守る

11. まとめ:この本が挑戦に与える希望と再現性

本書の価値は、「教えなくても人は育つ」という希望を示している点にある。
むしろ、“教えないからこそ育つ”。その再現性の高さは、著者が現場で積み重ねてきた実証の重みが裏付けている。

部下育成に悩むすべての挑戦者にとって、これは「関わり方を変えるだけで、組織は変わる」という強力なメッセージだ。

あなたが“教えすぎて疲れている”のなら、ぜひこの本を読んでみてほしい。
あなた自身の肩の荷が降りるだけでなく、部下も自ら立ち上がり始めるはずだ。

12. 書籍購入リンク

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